
グルーガイとは?
NBAを見ていると、どうしても得点を決める選手や、派手なアシストをする選手に目が向きます。
スター選手が大量得点を記録する。
強烈なダンクを決める。
試合終了間際に重要なシュートを決める。
こうしたプレーは分かりやすい見せ場です。
しかし、NBAにはスタッツだけでは価値を測りにくい選手もいます。
味方が得点しやすいようにパスを回す。
ディフェンスでは味方のカバーに入る。
リバウンドやルーズボールに飛び込む。
チームが必要としている仕事を引き受ける。
こうしたプレーを通して、チーム全体を支える選手がいます。
今回の「NBAの見方」では、そんな選手を表す言葉の一つ、
「グルーガイ」
について紹介します。
グルーとは、英語で接着剤という意味です。
つまりグルーガイとは、
「チームをつなぎ合わせ、全体を機能させる存在」
のことです。
特定のポジションやプレースタイルを表す言葉ではありません。
オフェンスで味方を生かす選手もいれば、ディフェンスでチームを支える選手もいます。
また、必ずしも控え選手や得点の少ない選手を指すわけではありません。
スター選手であっても、チームをつなぐ働きを担うことがあります。
大切なのは、その選手がチーム全体にどのような影響を与えているのかということです。

NBAの見方 #8|グルーガイとは? 得点だけでは測れない「チームをつなぐ」役割を解説
数字に表れないチームへの貢献
グルーガイを見るときに覚えておきたいのが、
「得点やアシストとして記録されなくても、チームに貢献している」
ということです。
例えば、オフェンスで味方がシュートを決めた場面。
そのシュートを打った選手には得点が記録されます。
最後にパスを出した選手には、アシストが記録されるかもしれません。
しかし、その前に適切なスクリーンをかけた選手や、ディフェンスを引きつけた選手にも重要な役割があります。
その動きがなければ、得点のチャンスは生まれていなかった可能性があるからです。
ディフェンスでも同じことが言えます。
相手のシュートをブロックすれば、スタッツに記録されます。
スティールも同様です。
しかし、味方が抜かれたときに素早くカバーへ入ったり、相手のドライブコースをふさいだりする動きは、必ずしも数字には残りません。
それでも、相手に難しいシュートを選ばせたり、攻撃をやり直させたりすることができます。
グルーガイの特徴は、こうしたプレーを通じて、チームメイトの仕事を助けられることにあります。
もちろん、グルーガイがすべての場面で目立たない仕事だけをしているわけではありません。
自ら得点することもあれば、試合を決めるようなプレーを見せることもあります。
重要なのは、
「自分の活躍だけでなく、チーム全体を良くするために何をしているのか」
という視点です。
シェーン・バティエ|チームを支えたグルーガイ
以前の「NBAの見方 #3|ロールプレイヤーとは?」でも紹介したのが、シェーン・バティエです。
2012年、2013年と連覇を達成したマイアミ・ヒート。
チームの中心には、レブロン・ジェームズ、ドウェイン・ウェイド、クリス・ボッシュがいました。
そのスター選手たちを支えていた一人がバティエです。
バティエは、アウトサイドシュートやディフェンスでチームに貢献した選手です。
相手の主力選手を守る。
スリーポイントを決める。
身体を張って相手のプレーを妨げる。
さらに、豊富な経験や高い判断力を生かしてチームを支えていました。
こうした働きによって、スター選手たちが自分の役割に集中しやすい環境を作っていました。
バティエのように、チームに必要な仕事を引き受け、選手同士をつなぐ存在は、グルーガイの分かりやすい例と言えます。
ただし、グルーガイの特徴は一つではありません。
ここからは、異なる形でチームを支えた3人の選手を紹介します。
ボリス・ディアウ|オフェンスをつなぐグルーガイ
まず紹介したいのが、ボリス・ディアウです。
ディアウは、オフェンスをつなぐグルーガイとして特徴的な選手でした。
特に分かりやすいのが、2013-14シーズンのサンアントニオ・スパーズでの活躍です。
当時のスパーズには、ティム・ダンカン、トニー・パーカー、マヌ・ジノビリ、若きカワイ・レナードらが在籍していました。
チーム全体でボールを動かし、相手のディフェンスを崩していくオフェンスが大きな武器でした。
その中で重要な役割を担っていたのがディアウです。
ディアウはビッグマンでありながら、高いパスセンスと判断力を持つ選手でした。
例えば、ディアウがハイポスト付近でボールを受けた場面。
味方がリングへカットします。
ディアウはその動きを確認し、適切なタイミングでパスを出します。
すると、カットした選手がゴール下で得点できます。
ここで重要なのは、パスの技術だけではありません。
味方がどこへ動いているのか。
相手のディフェンスがどこを守っているのか。
自分で攻めるべきなのか、それともパスを出すべきなのか。
こうした判断によって、オフェンスの流れを作っています。
2014年ファイナルでの活躍
2014年のNBAファイナルでは、スパーズとマイアミ・ヒートが対戦しました。
スパーズは第3戦からディアウをスターターに起用。
第4戦では9アシストを記録しました。
この試合でディアウが放ったシュートは6本。
つまり、自分のシュート試投数よりも多くのアシストを記録していたことになります。
もちろん、アシスト数だけでディアウの価値を測れるわけではありません。
しかし、自分が得点することに偏らず、チームの攻撃をつなぐ働きをしていたことが分かる数字です。
さらに、ディアウ自身もドライブやジャンプシュートで得点できます。
相手がパスを警戒すれば、自分で攻める。
逆に自分への守備が集まれば、味方へパスを出す。
このように複数の選択肢を持っていたことが、ディアウの強みでした。
自分自身も得点を狙いながら、味方のチャンスも作る。
ディアウは、パスと判断力によってチームのオフェンスをつなぐグルーガイでした。

アレックス・カルーソ|ディフェンスを支えるグルーガイ
続いて紹介するのが、アレックス・カルーソです。
カルーソは、ディフェンスを通してチームに大きな影響を与える選手です。
シカゴ・ブルズ時代には、優れたディフェンダーとして評価を高めました。
そして、2024-25シーズンにはオクラホマシティ・サンダーへ加入。
チームの強力なディフェンスを支える存在となりました。
カルーソの守備で分かりやすいのが、相手へのプレッシャーです。
ボールハンドラーに対して積極的にプレッシャーをかけ、ドリブルやパスのミスを誘います。
さらに、相手のパスコースを予測し、スティールを狙います。
こうしたプレーは、実際の試合でも目立ちやすいものです。
スティール以外にも注目したい守備
しかし、カルーソの価値はスティールだけではありません。
バスケットボールのディフェンスは、5人が連携して成立します。
例えば、味方が相手のドライブを止めきれなかった場面。
そのままリングへ向かわれれば、簡単なレイアップを許してしまう可能性があります。
そこでカルーソが素早くヘルプに入ります。
相手の進行方向をふさぎ、リングへ向かうことを難しくします。
すると、相手はドライブを止めたり、別の選手へパスを出したりする必要があります。
その間に、味方が守備の位置を整えることもできます。
カルーソがボールを奪っていなくても、守備に影響を与えている場面です。
さらに、スクリーンへの対応にも注目したいところです。
相手がスクリーンを使ってディフェンダーを引き離そうとします。
そこでカルーソは、スクリーンをかわしたり、味方と連携してマークを引き継いだりします。
こうした動きによって、チーム全体の守備を成立させています。
特に2025年のプレーオフでは、ニコラ・ヨキッチに対するディフェンスなどでも重要な役割を果たしました。
相手がどのような攻撃を仕掛けてくるのかを理解し、必要な場所へ動くことができます。
自分のマークを守るだけでなく、味方の守備も助ける。
カルーソは、守備の連携を通してチームをつなぐグルーガイと言えます。

ジョシュ・ハート|現代型グルーガイ
最後に紹介するのが、ジョシュ・ハートです。
ニューヨーク・ニックスで、攻守にわたって幅広い役割を担ってきた選手です。
ハートの特徴は、特定のプレーだけでなく、さまざまな形でチームに貢献できることにあります。
特に分かりやすいのが、リバウンドです。
ガードやウイングとしてプレーしながら、積極的にゴール下へ飛び込んでリバウンドを確保します。
相手のビッグマンと競り合い、身体を張ってボールを奪う場面も少なくありません。
2024-25シーズンには、レギュラーシーズンで平均9.6リバウンドを記録しました。
ガード・ウイングの選手としては非常に多い数字です。
リバウンドから次の攻撃へ
ハートを見るときに注目したいのが、リバウンドを確保したあとのプレーです。
通常、ディフェンスリバウンドを取った選手がガードへボールを渡し、そこから攻撃を組み立てることがあります。
しかし、ハートは自分でボールを運ぶことができます。
リバウンドを取る。
そのままドリブルを始める。
味方が走り出す。
そして、速攻から得点のチャンスを作る。
こうした流れによって、ディフェンスからオフェンスへの切り替えをスムーズにしています。
これは、単にリバウンドが得意というだけではありません。
リバウンドを取るという守備の仕事と、攻撃を始めるという仕事を、一人でつなげていることになります。
攻守の幅広い仕事をこなす
さらに、ハートはパスでもチームに貢献します。
自分がドライブした場面で、より良い位置にいる味方を見つければパスを出します。
味方がボールを持っている場面では、カットやスクリーンなどで攻撃を助けます。
もちろん、ディフェンスでも積極的に身体を張ります。
ルーズボールに飛び込むような献身的なプレーも特徴です。
ハートは、何か一つの役割だけに特化しているわけではありません。
リバウンドを取る。
ボールを運ぶ。
味方へパスを出す。
そして、相手を守る。
チームが必要としている仕事を、その場に応じて引き受けることができます。
現代のNBAでは、複数のポジションや役割に対応できる選手が重要になります。
ハートは、その万能性によってチーム全体を支える、現代型グルーガイの代表例です。

3タイプのグルーガイ
今回紹介した3人を整理してみましょう。
ボリス・ディアウは、オフェンスをつなぐタイプです。
パスと判断力によって、味方の得点機会を作ることができます。
アレックス・カルーソは、ディフェンスを支えるタイプです。
相手へのプレッシャーやヘルプ、守備の連携によってチームに貢献します。
ジョシュ・ハートは、攻守にわたって幅広い仕事をこなす万能型です。
リバウンドから速攻へつなぐなど、複数の役割を一つのプレーの中で担うことができます。

もちろん、この3つは正式な分類ではありません。
ディアウもディフェンスで貢献しますし、カルーソもオフェンスで重要な役割を担います。
ハートもリバウンドだけでなく、さまざまなプレーでチームを支えています。
それぞれの特徴を分かりやすく整理したものです。
しかし、3人には共通点があります。
それは、
「自分の活躍だけでなく、味方のプレーを助け、チーム全体を良くしている」
ということです。
グルーガイは、必ずしも特定の仕事だけを担当する選手ではありません。
チームが必要としている役割を理解し、周囲の選手を生かすことができます。
そこがグルーガイの大きな特徴と言えます。
グルーガイを見るときのポイント
では、実際にNBAを見るときは、どこに注目すればいいのでしょうか。
誰が得点のチャンスを作った?
まずは、シュートが決まる前のプレーに注目してみてください。
例えば、味方がゴールへカットして得点した場面。
最後にパスを出したのは誰だったのでしょうか。
その選手は、なぜ味方がフリーになることを予測できたのでしょうか。
あるいは、シュートを決めた選手がフリーになるまでに、誰がスクリーンをかけていたのでしょうか。
ボールを受ける前の動きにも注目すると、得点のチャンスがどのように生まれたのかが分かってきます。
誰が味方の守備を助けた?
ディフェンスでは、ボールを持っている相手を守る選手だけでなく、その周囲にも注目してみてください。
味方がドライブで抜かれたとき、誰がカバーに入ったのでしょうか。
相手がスクリーンを使ったとき、どのように連携して対応したのでしょうか。
そして、その結果として相手の攻撃を止めることができたのでしょうか。
ブロックやスティールが記録されなくても、チームの守備を助けている場面は多くあります。
次のプレーにどうつなげた?
もう一つ注目したいのが、一つのプレーが終わったあとの動きです。
例えば、リバウンドを確保した場面。
その選手は、すぐに味方へボールを渡したのでしょうか。
それとも、自分でボールを運んで攻撃を始めたのでしょうか。
さらに、味方が速攻へ走り出すきっかけを作っていなかったでしょうか。
こうした部分に目を向けると、攻撃と守備がどのようにつながっているのかが見えてきます。

グルーガイを見るときは、一つのプレーだけでなく、その前後の動きにも注目してみてください。
シュートが決まった瞬間だけではなく、その得点がどのように生まれたのか。
ディフェンスで相手を止めた瞬間だけではなく、誰がその守備を助けたのか。
そうした部分を見ることが、グルーガイの価値を理解するヒントになります。
ロールプレイヤーとの違い
以前紹介したロールプレイヤーと、グルーガイはどのように違うのでしょうか。
ロールプレイヤーは、チームの中で求められた役割を果たす選手のことです。
例えば、スリーポイントを決める。
相手の主力選手を守る。
ゴール下を守る。
スクリーンをかけてリングへ走る。
こうした役割を担う選手がロールプレイヤーです。
一方、グルーガイは、そうしたプレーを通じて、チーム全体をつなぐ働きに注目した言葉です。
つまり、両方に当てはまる選手もいます。

例えば、シェーン・バティエ。
相手のエースを守り、スリーポイントを決めるという役割を担っていました。
この点ではロールプレイヤーと言えます。
同時に、チームメイトを助け、チーム全体を支える存在でもありました。
この点ではグルーガイと表現できます。
大切なのは、どちらか一方に分類することではありません。
「その選手は何を任されていて、その仕事がチームにどのような影響を与えているのか」
ということです。
過去に紹介したロールプレイヤーについては、こちらの記事でも解説しています。
得点以外のプレーにも注目してみよう
グルーガイを見るとき、得点やアシストといった数字だけでは分からない部分があります。
例えば、ディアウがパスを出す前の判断。
カルーソがヘルプへ動くタイミング。
ハートがリバウンドを確保したあとの行動。
こうしたプレーが、チーム全体に影響を与えています。
NBAでは、スター選手が試合の中心になることが多くあります。
しかし、そのスターが活躍するためには、周囲の選手の働きも欠かせません。
ボールを持っていなくても仕事をしている選手がいます。
得点しなくてもチームを助けている選手がいます。
そして、チームの足りない部分を埋めることで、勝利に貢献している選手がいます。
次にNBAを見るときは、
「なぜ、この選手がコートにいるとチームがうまく機能するのか」
という視点でも試合を見てみてください。
得点ランキングやハイライトだけでは見えてこなかった選手の価値が、少しずつ分かるようになるかもしれません。
最後に
NBAの見方シリーズの第8弾、今回はグルーガイについて紹介しました。
また、これまで紹介してきたロールプレイヤーと重なる部分も多く、過去の動画を振り返りながら見るのも面白いテーマだと思います。
これで選手の役割紹介的なストックが一旦切れたので、これからどんなことを動画にしょうか考え中です。
ぜひ何か扱って欲しい内容がありましたら、ご連絡ください!!
最後までご覧いただきありがとうございました。
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