NBAの見方 #7|ストレッチビッグとは? スリーだけじゃない「守備を外へ引き出す」役割を解説




NBAの見方 #7|ストレッチビッグとは? スリーだけじゃない「守備を外へ引き出す」役割を解説

ストレッチビッグとは?

NBAを見ていると、センターやパワーフォワードがスリーポイントラインの外からシュートを決める場面があります。

かつてはゴール下でのプレーが中心だったビッグマンですが、現代のNBAではアウトサイドから得点できる選手も珍しくありません。

こうした選手を「ストレッチビッグ」と呼ぶことがあります。

ストレッチビッグとは、簡単に言えば、

「アウトサイドシュートを武器に、相手のディフェンスを外へ引き出せるビッグマン」

のことです。

パワーフォワードならストレッチ4。

センターならストレッチ5と呼ばれることもあります。

分かりやすい特徴は、スリーポイントを決められることです。

しかし、ストレッチビッグの仕事は、自分がシュートを決めることだけではありません。

外へ広がる。

相手のビッグマンが、そのシュートを警戒する。

すると、リング付近には味方が攻め込むためのスペースが生まれます。

つまり、ストレッチビッグは、

「外からのシュートを警戒させることで、オフェンス全体に影響を与える選手」

とも言えます。

NBAの見方 #7|ストレッチビッグとは? スリーだけじゃない「守備を外へ引き出す」役割を解説

シュートを打たなくても仕事をしている

ストレッチビッグを見るときに覚えておきたいのが、

「シュートを打たなくても、外にいること自体に意味がある」

ということです。

例えば、センターがゴール下にいる場面を考えてみます。

攻撃側のセンターがリング付近にいれば、相手のセンターもゴール下を守りやすくなります。

そのため、味方のガードがドライブしても、リング付近で相手センターに止められてしまう可能性があります。

しかし、そのセンターがスリーポイントラインの外へ広がったらどうでしょうか。

外からシュートを決められる選手であれば、相手は簡単に放置できません。

相手のセンターが外まで守りに出れば、その分ゴール下の守備は手薄になります。

すると、ガードがドライブしやすくなる。

味方がリングへカットしやすくなる。

インサイドで得点するチャンスが増える。

こうした変化が生まれます。

ストレッチビッグ自身がシュートを打っていなくても、その存在によって味方の攻撃が成功することがあります。

もちろん、すべての場面で相手センターが外についてくるわけではありません。

しかし、外からのシュートを警戒させることで、相手の守備位置や判断に影響を与えられることが重要なのです。

ブルック・ロペス|プレースタイルを変えたビッグマン

以前の「NBAの見方 #3|ロールプレイヤーとは?」でも紹介したのが、ブルック・ロペスです。

ブルックリン・ネッツ時代のロペスは、ゴール下でのポストプレーやインサイドでの得点を中心としたセンターでした。

しかし、キャリアの途中からスリーポイントを大きな武器に変えていきます。

ミルウォーキー・バックスでは、そのアウトサイドシュートがチームのオフェンスを支える重要な要素になりました。

バックスの中心には、ヤニス・アデトクンボがいました。

ヤニスの大きな武器は、強烈なドライブです。

そのヤニスがリングへ向かうとき、相手センターがゴール下に待ち構えていれば、得点は難しくなります。

しかし、ロペスが外に広がることで、相手センターをリングから遠ざけられる可能性があります。

その結果、ヤニスが得意とするドライブを仕掛けやすくなるのです。

ロペスは、もともとインサイドを中心にプレーしていたセンターが、ストレッチビッグとして新しい役割を手に入れた代表例と言えるでしょう。

ここからは、タイプの違う3人のストレッチビッグを見ていきます。

ダーク・ノビツキー|先駆的なストレッチ4

まず紹介したいのが、ダーク・ノビツキーです。

ダラス・マーベリックスの中心選手として長く活躍したノビツキーは、ストレッチ4の先駆的な存在です。

かつてのNBAでは、パワーフォワードやセンターには、ゴール下での得点やリバウンド、フィジカルを使ったプレーが強く求められていました。

しかし、ノビツキーはアウトサイドからも非常に高い得点能力を発揮しました。

ミドルレンジからのジャンパー。

スリーポイント。

そして、代名詞とも言えるワンレッグ・フェイダウェイ。

長身のビッグマンでありながら、外から次々にシュートを決めることができました。

そのため、相手はノビツキーをゴール下だけで守ることができません。

ノビツキーが外でボールを受ければ、相手のビッグマンも高い位置まで対応する必要があります。

これによって、相手ディフェンスの守る位置が変わります。

ノビツキーが外にいることで生まれるスペース

ここで注目したいのが、ノビツキー自身が得点しない場面です。

ノビツキーがアウトサイドに位置する。

相手のビッグマンが、そのシュートを警戒する。

すると、リング付近を守る人数や、ヘルプに動ける位置が変わってきます。

そのスペースを利用して、ガードがドライブすることもできます。

もちろん、ノビツキー自身がボールを受ければ、そのまま得点を狙うことも可能です。

つまり相手は、

ノビツキーのシュートを止めるのか。

それとも、味方のドライブを止めるのか。

難しい判断を迫られます。

ノビツキーは単純に外で待つシューターではありませんでした。

自分自身がチームの中心となって得点しながら、相手の守備を動かすこともできる選手だったのです。

ビッグマンがアウトサイドからオフェンスを作る。

その可能性を大きく広げた選手と言えるでしょう。

ケビン・ラブ|スター選手の攻撃を広げるストレッチビッグ

続いて紹介するのが、ケビン・ラブです。

ラブは、ノビツキーとは少し違った形でストレッチビッグの役割を担いました。

特に分かりやすいのが、クリーブランド・キャバリアーズ時代です。

当時のキャバリアーズには、レブロン・ジェームズとカイリー・アービングがいました。

レブロンは、フィジカルを活かした強力なドライブ。

カイリーは、優れたボールハンドリングから相手をかわしてリングへ向かうプレー。

どちらもインサイドへアタックできる選手です。

そこにラブのアウトサイドシュートが組み合わさります。

ラブが外に広がれば、相手のパワーフォワードやセンターは、そのシュートを警戒する必要があります。

すると、レブロンやカイリーがリングへ向かうためのスペースを作りやすくなります。

逆に、レブロンやカイリーのドライブを止めるために守備がゴール下へ集まれば、外にいるラブがフリーになる可能性があります。

スター選手の得点力と、ストレッチビッグのシュート力が組み合わさった形です。

ピック&ポップという武器

ラブの特徴を説明するときに欠かせないのが、ピック&ポップです。

ピック&ロールでは、スクリーンをかけた選手がリングへ向かいます。

前回のリムランナー編で紹介した、クリント・カペラのような動きです。

しかし、ピック&ポップでは動く方向が変わります。

スクリーンをかける。

ボールハンドラーがスクリーンを利用して攻める。

その後、スクリーンをかけた選手はリングではなく、アウトサイドへ開きます。

これがピック&ポップです。

ラブがスクリーンをかけたあとに外へ開くと、守備側は判断を迫られます。

レブロンやカイリーのドライブを止めるのか。

それとも、外へ開いたラブのシュートを止めるのか。

ボールハンドラーを止めるために守備が中へ寄れば、ラブへのパスからスリーポイントを狙えます。

逆にラブを警戒して相手ビッグマンが外へ出れば、ボールハンドラーがリングへ向かいやすくなります。

このように、ピック&ポップはストレッチビッグのシュート力を活かした代表的なプレーです。

ラブはリバウンドやインサイドでの得点も得意な選手でした。

そこへアウトサイドの脅威が加わることで、スター選手と共存しながらチームの攻撃を広げる役割を担っていたのです。

カール=アンソニー・タウンズ|現代型ストレッチ5

最後に紹介するのが、カール=アンソニー・タウンズ。

KATの愛称でも知られる、現代型のストレッチビッグです。

2024-25シーズン、ニューヨーク・ニックスに加入したKATは、ジェイレン・ブランソンと強力なコンビを形成しました。

KATはセンターとしてのサイズを持ちながら、高いスリーポイント能力を備えています。

そのため、相手のセンターはスリーポイントラインの外まで守りに出る必要があります。

ここで重要になるのが、ブランソンとの関係です。

ブランソンは、ドリブルから相手を崩し、ペイントへ侵入することが得意な選手です。

しかし、リング付近に大きなディフェンダーが待ち構えていれば、得点は難しくなります。

そこでKATが外に広がります。

相手センターがKATのスリーを警戒して外へ出れば、ブランソンが使えるスペースが増えます。

ブランソンがドライブする。

守備がブランソンへ集まる。

その結果、KATが外でフリーになる。

こうした形も作ることができます。

外でも中でも得点できるKAT

さらに、KATの特徴はアウトサイドシュートだけではありません。

相手がスリーポイントを警戒して距離を詰めてきた場合には、自分でドライブすることもできます。

例えば、スリーポイントラインの外でボールを受けた場面。

相手ディフェンダーがシュートを警戒して前へ出る。

そこでKATがショットフェイクを入れる。

相手のバランスが崩れれば、そのままドライブしてリングを狙えます。

さらに、インサイドでの得点やリバウンドでも貢献できます。

アウトサイドからシュートを決める。

相手が前へ出ればドライブする。

インサイドでもサイズを活かして得点する。

KATはこうした複数の選択肢を持っています。

単に外で待っているだけではなく、自分自身がさまざまな場所から得点できることが大きな特徴です。

そのため、相手はシュートだけでなく、ドライブやインサイドへの対応も考えなければなりません。

現代型ストレッチ5の代表例と言えるでしょう。

3タイプのストレッチビッグ

今回紹介した3人を整理してみます。

ダーク・ノビツキーは、先駆的なストレッチ4。

アウトサイドから自分自身がチームの中心となって得点できるタイプです。

ケビン・ラブは、スター選手との共存型。

レブロンやカイリーが攻めるためのスペースを作りながら、自分もアウトサイドから得点を狙えます。

カール=アンソニー・タウンズは、現代型のストレッチ5。

スリーポイントだけでなく、ドライブやインサイドでも得点できるタイプです。

同じストレッチビッグでも、チームで求められる役割や得点の方法には違いがあります。

しかし、共通していることがあります。

それは、

「アウトサイドで脅威になることで、相手ディフェンスの位置や判断を変えられる」

ということです。

シュートを決めたかどうかだけではなく、守備にどのような影響を与えたのか。

そこがストレッチビッグを見るうえで重要なポイントになります。

ストレッチビッグを見るときのポイント

では、実際にNBAを見るときは、どこに注目すればいいのでしょうか。

ビッグマンはどこに立っている?

まずは、ビッグマンの立ち位置に注目してみてください。

ゴール下にいるのか。

ミドルレンジにいるのか。

それともスリーポイントラインの外にいるのか。

特に、自分がボールを持っていないときの位置が重要です。

外に広がっているビッグマンがいれば、その選手のシュート力を利用してスペースを作ろうとしているのかもしれません。

相手のビッグマンはどこを守っている?

次に、相手のビッグマンの位置を確認します。

ストレッチビッグに外までついてきているのか。

それとも、リング付近に残っているのか。

もし相手センターが外まで出ていれば、リング付近を守る選手が減っている可能性があります。

逆に、相手が中に残っていれば、ストレッチビッグが外からシュートを狙うチャンスになります。

守備側がどちらを選んでいるのかを見ると、チームが何を警戒しているのかも分かってきます。

誰にスペースが生まれた?

そして、最も注目したいのが、その結果です。

ストレッチビッグが外に立ったことで、

味方のドライブコースが空いたのか。

リングへカットする選手がフリーになったのか。

守備が外へ動いたことで、別の味方が攻めやすくなったのか。

ここを見ると、ストレッチビッグがシュートを打っていない場面でも、オフェンスに貢献していることが分かります。

シュートを打った瞬間だけでなく、その前に守備がどう動いたのかにも注目してみてください。

リムランナーとの違い

前回紹介したリムランナーと比較すると、ストレッチビッグの特徴がさらに分かりやすくなります。

リムランナーは、スクリーンのあとにリングへ向かいます。

その動きを警戒した守備が、ゴール方向へ引きつけられます。

一方、ストレッチビッグは外へ広がります。

外からのシュートを警戒した守備が、リングから離れる方向へ動きます。

つまり、代表的な動きを比べると、

リムランナーは、守備をゴール方向へ引きつける。

ストレッチビッグは、守備をアウトサイドへ引き出す。

という違いがあります。

もちろん、両方の役割をこなせるビッグマンもいます。

大切なのは、それぞれの動きがオフェンスにどのような影響を与えているのかということです。

動く方向は違っても、

「味方のためにスペースを作る」

という点では共通しています。

前回のリムランナー編については、こちらの記事でも解説しています。

リムランナーとは? ダンクだけじゃない「リングへ走る」役割を解説

シュートを打たない瞬間にも注目してみよう

ストレッチビッグを見るとき、スリーポイント成功は分かりやすい見せ場です。

しかし、本当に注目したいのは、その少し前の配置や動きです。

ビッグマンが外に広がる。

相手の守備がその選手を警戒する。

リング付近にスペースが生まれる。

そして、別の味方がそのスペースを使って攻める。

ストレッチビッグ自身にパスが来ないこともあります。

シュートを打たないこともあります。

それでも、その存在によって守備が動けば、オフェンスにはすでに影響を与えています。

次にNBAを見るときは、シュートを決めた選手だけではなく、

「その選手が攻めやすくなったのは、なぜなのか」

にも注目してみてください。

外に広がるビッグマンの仕事が、少し見えやすくなるかもしれません。

最後に

NBAの見方シリーズの第7弾です。

個人的な思い入れとしては、初めて買ったNBA選手のユニフォームはノビツキーです。

理由はデザインがカッコよかったから、その理由で父に買ってもらいました。

後からプレイを見て、さらに好きになりました。

あと当時のストレッチというか万能系のフォワードとして、クリス・ウェバーが大好きでした。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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